「デイサービス経営が厳しい理由と改善方法」専門家が解説する経営戦略

デイサービス

1. はじめに

現代社会では、人口高齢化が進行し、デイサービスの需要が増大しています。しかし、その一方でデイサービスの経営は厳しい状況に直面しています。厳しい状況の背後には、人手不足、資源の制限、省力化の難しさ、ユーザーの多様なニーズといった問題が存在します。

介護を必要としている人を「要介護者」と呼びますが、高齢化の影響もあり日本の要介護者は年々増えています。内閣府の「令和3年高齢社会白書」によると、日本の高齢化率(日本の総人口に占める高齢者の割合)は28.8%となっており、65歳以上人口は3,619万人でした。

65〜74歳人口は1,747万人で総人口に占める割合は13.9%、75歳以上人口は1,872万人で総人口に占める割合は14.9%となっており、後期高齢者数が非常に多いことが分かります。しかし、介護業界は人手不足が深刻で、2020年から2025年までに約29万人の介護人材の不足が指摘されています。

2018年度「介護労働実態調査」の時点では、既に67.2%の介護サービス事業所が人材不足に陥っていると回答しています。つまり、現在はただでさえ深刻な人手不足であるにも関わらず、今後ますます深刻化するという可能性があるわけです。

介護業界に興味があるという人や介護の現場における経験がある人は歓迎されやすいので、売り手市場と言えます。この傾向はこれからも続くと考えられているので、看護職員の将来性はやはり非常に高いと言えるのです。

それらの問題を解決し、デイサービス経営を改善するためには何が必要なのでしょうか?本稿では、デイサービス経営が直面する問題とその対策を専門家の視点から詳しく解説します。また、未来のデイサービス経営についての展望と課題も議論します。

これを読めば、デイサービス経営をより深く理解し、改善のヒントを得ることができます。「デイサービス経営に悩む」あなたにぜひお読みいただきたい内容です。

2. デイサービス経営が厳しい理由

デイサービス経営が厳しい理由には、以下の5つの要素が挙げられます。

(1) 人口の高齢化と需要の増大

日本の高齢化は進行し、それに伴いデイサービス利用者が増えています。しかし、サービス提供体制の整備が追いつくことなく、適切なサービスを提供することが難しくなっています。

(2) 慢性的な人手不足と人材確保の困難

介護業界全体で人手不足は深刻で、特に専門性を持った人材の確保が難しい現状があります。従業員が定着しにくく離職率が高いのが悩みです。人手不足になると、充実したサービスを提供できず、利用者が減る可能性もあります。

また従業員が少なくなることで、残った従業員の負担がさらに大きくなり、離職に歯止めがかからないという悪循環に陥りかねません。デイサービス経営では、従業員の離職率を下げるために、働きやすい職場作りが重要です。

(3) 経営資源の制限と予算の問題

資金面での支援は限定的で、経営改善や施設の更新など、必要な投資を行うことが困難な場合があります。

令和3年介護報酬改定で、LIFEの活用が算定要件に含まれる加算なども増えました。算定のハードルの高さが、算定率の低下につながっていると考えられます。

そのほかコロナ禍による利用控えも、利用者単価に大きな影響を与えています。

(4) 地域に向けた発信力の弱さ

地域で孤立しているデイサービスは業績が悪いことが多いです。

日頃からケアマネージャーやご家族と連絡が取れているデイサービスは、厳しいながらも新規の体験獲得や業績の維持ができています。

逆に、地域との連絡網が弱く、ケアマネージャーや家族からも頼りにされていないデイサービスは

稼働率が壊滅的です。

(5) ユーザーのニーズ多様化とサービス品質への要求

利用者のニーズは多様化しており、それに対応するためのサービスの質向上が求められています。食事にとても力を入れている施設もあれば、入浴にこだわっている施設もあるなど、施設によってそれぞれ特色があります。レクリエーションの内容も、集団で行うものをメインにしているところもあれば、個別で楽しむものを中心とする施設もあり、中には機能訓練に特化した内容を実施しているところもあります。

利用者獲得が激化している中で、デイサービスに求めるニーズも多様化しています。利用者に飽きられるデイはすぐ淘汰される状況も多く、新規参入した事業者が早期撤退している例もあります。

また、以前から事業運営をしていた事業者の中には、世情の変化に対応できる自社の特色や強みを前に出せないまま経営難に陥り、最悪倒産というケースも少なくありません。

3. デイサービス経営を改善するための方法

デイサービス経営を改善するためには、以下の5つの方法が考えられます。

(1) 業務の見直しと省力化・効率化の推進

まずは、現在の業務フローを見直し、無駄な作業を排除しましょう。更にICTを活用した業務管理などで、省力化と効率化を目指します。

また、1カ月あたりの経費を把握した後は削減できる経費がないか確認し、それぞれに優先順位をつけます。優先順位は単純に削減したい経費を順番に選ぶのではなく、削減のハードルが低いものと削減による影響が大きいものを分けましょう。

たとえば、事業所の賃料は事業所を移転させなければ削減するのは難しいため、削減による影響が大きいものに分けることができます。一方で、消耗品費は適正な在庫管理を行うことで削減が可能なため、削減のハードルが低いものと判断できます。また、印刷費はICT機器の導入によってペーパーレス化が可能になれば、大幅なコスト削減が可能です。このように、経費削減するとどのような状態になるのかを想定しながら、削減したい経費の優先順位をつけていきましょう。

(2) 設備投資と環境改善

設備投資による環境改善も重要です。バリアフリー化や施設の清潔さなど、利用者の快適性を高めるための改善を進めます。

また、職員の離職率が高い場合、その分採用コストの負担が大きくなるため、人材が定着しやすい環境を作ることが重要です。また、人材の入れ替わりが激しいと、サービスの質にも影響を与えます。女性だけではなく、男性の育休も奨励されている背景もあるため、育休や産休、介護休暇の制度を整備するなど、労働環境を見直し、働きやすい環境を構築しましょう。

(3) スタッフ教育と人材育成

スタッフの教育と人材育成に力を入れましょう。専門知識や技術を身につけたスタッフが、高品質なサービスを提供できます。

いくら求人費を割いて採用数をあげてもスタッフの定着率が悪いと、入職して3ヶ月以内に離職してしまったりします。介護従事者の離職率は全産業平均からしてもそこまで低くありませんが、有効求人倍率をみてみると5事業所に1人の割合で求人を出しているので、介護スタッフからすると仕事はいくらでもある状態です。

良い意味で、「辞めない職場作り」をすることが2045年以降生き残れる事業所か否かを決めるといって過言ではありません。

スタッフの定着率をあげるには

  1. 教育制度がしっかり整っている
  2. 仕事の悩みを気軽に相談できる環境がある
  3. 無駄な業務・会議がなくいい意味で楽できる

などが挙げられます。

(4) ユーザーへのサービス提供の多様化

多様なニーズに対応するためには、サービス内容を広げ、多様化することも必要です。独自の強みを持てばアピール要素となり、生き残りやすいです。特定の分野に特化する、先進的なサービスを提供するなどすれば他事業所との差別化が図れます。

例えば、賛否がある内容ではありますが、“エンターテインメント型デイサービス”といった、参入元企業が元来持っている強力な強みを運営に活かしている事業所もあります。

(5) 地域との協力体制の強化

地域との連携を深め、地域全体でサポート体制を構築することで、より広範囲の支援が可能になります。これらの方法を取り入れることで、デイサービス経営は着実に改善されていくでしょう。

介護の相談や、勉強会や老人クラブとの交流、ボランティアの受け入れなど、地域との接点を多く持てるよう活動する必要があります。

接点を増やし、信頼を得られれば潜在的な顧客を獲得できるでしょう。

4. デイサービス経営の今後の展望と課題

デイサービス経営の展望として注目すべきは、スマートエイジング社会への対応です。人口の高齢化が進む中、サービスの必要性は増す一方で、これに対応するための経営戦略が求められます。

次に、ICT技術の活用です。IT化は、効率的なサービス提供や運営を可能にし、経営負担を軽減します。特にデータ管理や業務の自動化により、人手不足の問題を緩和する機会を提供します。

またユーザーのQOL向上への取り組みは欠かせません。利用者一人ひとりの生活満足度を高めるサービスが、経営の中心軸でなければなりません。

最後に、地域との連携強化と地域包括ケアシステムの構築が重要な課題となります。地域との連携は、サービス提供だけでなく人材確保や情報共有にも貢献し、経営を強化します。

以上がデイサービス経営の今後の展望と課題です。これらに適切に対応する経営戦略が求められます。

(1) スマートエイジング社会への対応

スマートエイジングとは、東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念です。「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」と定義されています。

一方で、この状況は新たな需要の増加を意味します。具体的な対応策としては、サービスメニューの拡充や、高齢者が抱える問題に対応したプログラム作り等が挙げられます。また、高齢者自身の意識やニーズに応じた質の高いサービス提供や、安心して過ごせる環境作りも重要となります。

【 スマートエイジング社会への対応策】

対応策内容
サービスメニューの拡充高齢者のニーズに合わせたサービスを増やす
プログラム作り高齢者が抱える問題に対応したプログラムを作成
質の高いサービス提供高齢者の意識やニーズに応じたサービスを提供
環境作り高齢者が安心して過ごせる環境を作る

さらに具体的には以下のような対策も必要になります。

  • ① 年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指す。
    • 年齢区分でライフステージを画一化することの見直し
    • 誰もが安心できる「全世代型の社会保障」も見据える
  • ② 地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る。
    • 多世代間の協力拡大や社会的孤立を防止
    • 高齢者が安全・安心かつ豊かに暮らせるコミュニティづくり
  • ③ 技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する。
    • 高齢期の能力発揮に向けて、新技術が新たな視点で、支障となる問題(身体・認知能力等)への解決策をもたらす可能性に留意

これらの対応策を適切に行うことで、デイサービス経営はスマートエイジング社会に対応できるでしょう。

(2) テクノロジーの活用とICT化

デイサービスの経営において、テクノロジーの活用とICT化は、効率化と利用者サービス向上の両方を目指す重要な要素です。例えば、スケジュール管理や請求業務などの事務作業をデジタル化すると、手間が省け、時間の節約につながります。

さらに、ICTを用いた遠隔モニタリングシステムを導入することで、利用者の健康状態をリアルタイムで把握できます。これにより、予防的な介護が可能となり、利用者のQOL向上に大きく貢献します。

以下の表は、一部のICTツールの具体例とその有用性を示しています。

ICTツール有用性
クラウド型スケジュール管理システム事務作業の効率化、エラーの削減
遠隔モニタリングシステム利用者の健康管理、予防的介護の推進

これらのICT化は初期投資が必要ですが、長期的に見れば経営効率化と利用者満足度の向上に寄与すると考えられます。

実際にICTサービスを導入した介護事業所の活用事例を2例ご紹介します。

事例1:事業内容:訪問介護サービス

  • 導入したICT:介護記録ツール
  • 製品名:Care-wing(介護の翼)
  • ICT導入をしようと思った理由:介護報酬の特定事業所加算が主な目的
  • ICT導入による効果:
    • 手書きで介護記録を取っていた頃よりも記録の質が上がり、事業所・スタッフ間でいつでも介護記録が確認できるようになったことで「情報の見える化」が進んだ
    • スタッフ間の情報伝達がスムーズになり、ヘルパーのモチベーションがアップした
    • オンライン会議ができるようになり在宅業務が可能となった

事例2:事業内容:特別養護老人ホーム運営

  • 導入したICT:介護記録のモバイル端末入力・見守りセンサー・勤務シフト自動作成システム、他
  • 製品名:不明
  • ICT導入をしようと思った理由:現状のままでは2025・2040年問題に対応できないと認識したため
  • ICT導入による効果(予測含む):
    • 介護記録のモバイル端末入力により、利用者とコミュニケーションをとりながら記入でき、リアルタイムで情報を共有できた
    • 見守りセンサー導入により転倒・転落の予測を検知できるため、職員の訪室業務が約80%軽減でき、スタッフのストレスが減少した
    • 勤務シフト自動作成システム導入により勤務の公平性・スタッフの利便性が向上する

(3) ユーザーのQOL(Quality of Life)向上への取り組み

デイサービス経営において、ユーザーのQOL(Quality of Life)向上は重要な課題です。これは、利用者がより良い生活を送ることが可能となるよう、サービスの質や内容を改善する取り組みを指します。

まず、各利用者の個々のニーズに対応したプログラムの提供が求められます。例えば、健康状態や趣味、生活習慣などを考慮した活動やメニューの提供です。また、心理的なサポートも重要で、対話を通じたコミュニケーションの充実を図ることで孤独感の軽減や生活満足度の向上につながります。

次に、サービスの利用しやすさを追求することも大切です。アクセシビリティの向上や入浴・食事などの基本的な生活支援に加え、レクリエーションや教養活動などの多様なサービスを提供し、利用者一人ひとりのライフスタイルを支えるような取り組みが重要となります。

以上のように、利用者のQOLを向上させる取り組みは、デイサービス経営の持続的な成功に寄与します。

(4) 地域との連携強化と地域包括ケアシステムの構築

デイサービス経営の成功の一部は地域との良好な関係によるところが大きいです。地域との連携を強化することで、ユーザーに対するサービス提供がスムーズに進むだけでなく、地域全体での高齢者支援体制を作り上げることが可能となります。

具体的な連携の形としては、地元の医療機関や福祉施設との情報共有、共同イベントの開催、相互のサービス利用促進などが考えられます。

また、地域包括ケアシステムの構築にも力を入れるべきです。このシステムは、「住み慣れた地域で安心して生活を続けられるように」という理念に基づいており、医療・介護・予防・居住・生活支援を一体的に提供します。

デイサービス上、以下の取り組みが考えられます。

【取り組み例】

  1. 地域の医療・福祉機関との情報共有を行う
  2. 共同イベントを開催し、地域との結びつきを深める
  3. 地域包括ケアシステムの一環として、デイサービスの活用を推進する

これらの取り組みを通じて、地域での高齢者支援体制を強化し、デイサービス経営を安定させることが期待できます。

5. まとめ

デイサービス経営が厳しい理由として、人口の高齢化、人手不足、経営資源の制限、省力化の難しさ、さらにサービス品質への高い要求が挙げられます。

それらに対する改善策として、業務の見直し、設備投資、スタッフ教育や人材育成、サービスの多様化、地域との協力体制の強化が重要です。また、今後のデイサービス経営は、スマートエイジング社会への対応、テクノロジーの活用、ユーザーのQOL向上に向けた取り組み、地域との連携強化が求められます。これらの課題と向き合うことで、デイサービス施設はさらなるサービス向上を目指し、地域社会と共に成長していくことが期待されます。

デイサービスをはじめ介護事業を開業するとなれば、さまざまな指定基準を満たす必要があります。

大きく分けて人員基準、設備基準、運営基準の3つは、どのような施設であっても守らなくてはならないため、まずはこれらをクリアすることが第一条件となるでしょう。

また、いくら基準を満たしていたとしても、事業を運営していく資金がなければ倒産となってしまう可能性があります。

せっかく開業したデイサービス事業を長続きさせるためにも、資金調達の方法を知っておくとともに、綿密な資金繰り計画を立てておくことも重要です。

そしてコンセプトやサービス内容も開業前にしっかりと考えておくことで「利用者が利用しやすい施設」を目指すことができ、より地域に愛されるデイサービスを提供できるでしょう。今回ご紹介した内容をもとに、無理なく安定した開業を目指しましょう。

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