1. イントロダクション:放課後等デイサービスとは?
放課後等デイサービスとは、学校や社会生活での支援が必要な障害のある児童や青少年が、放課後や休日に安心して過ごせる場所を提供するサービスのことです。親が仕事や家庭の事情で子供の面倒を見られない時間帯に、スタッフが個々のニーズに合わせた適切な支援を提供します。
具体的には、学習支援や生活技能の指導、自己表現の育成など、子どもたちが社会生活を営む上で必要な力を育てます。また、子どもたちが安心して過ごすことができるよう、適切な環境整備も行います。
このような役割を果たす放課後等デイサービスは、働く親世代からの需要が高まっており、子どもたちの成長を支える重要な場となっています。
施設に到着してからは、療育プログラムに応じた個人活動や集団活動がメインです。療育プログラムでは、子どもに合った様々なプログラムを実施していきます。
療育プログラムの例を以下の表にまとめました。
プログラム名 | 活動内容の例 | 目的 |
個人活動療育プログラム | ・宝探し・おやつを使った買い物ごっこ・数字・風船タッチ | 計算の練習や自立支援の一環、集中力・体力・思考力が養われる |
集団活動療育プログラム | ・ひっくり返しゲーム・2人1組のダンボール競走・チーム対抗のスリッパ跳ばし・新聞紙破り・使う物カルタ | 友達とのコミュニケーションの練習やチームワークの大切さ、手先や指先のトレーニング、思考力や集中力、そして瞬発力を養われる |
制作プログラム | ・簡易ステンドグラス・ペットボトル空気砲・牛乳パックびっくり箱・お菓子の袋ポーチ | 想像力の向上や、コミュニケーションの練習、手先の器用さが養われる |
クッキングプログラム | ・ベビーカステラ・ポップコーン・お麩ラスク・クレープ | コミュニケーションの練習や、想像力の向上、自立するための能力が養われる |
中でも重要なのが、個人活動や集団活動の療育プログラムです。療育プログラムを熟知しているスタッフは即戦力になり、保護者からも信頼されやすくなります。
ぜひこの記事を参考に、活動プログラムをあらかじめ予習して効果的な活動をおこなってください。
2. 放課後等デイサービスの現状と問題点
放課後等デイサービス業界の現状では、ますます利用者数が増加しています。しかし、それに伴い問題も表面化しており、児童の増加に対する施設数の不足が挙げられます。全国的に規模拡大が進んでいる一方で、特に都市部では施設の供給が追いつかない状況が見受けられます。
さらに、サービスの質にばらつきが存在し、それが改善の課題となっています。具体的には、スタッフの教育・研修体制の不足や、安全対策の不備などが指摘されています。
以下に具体的な問題点を一覧表で示します。
問題点 | 具体例 |
課題1:施設数の不足 | 都市部での供給不足 |
課題2:質のばらつき | スタッフ教育・研修体制の不足、安全対策の不備 |
これらを解決することで、放課後等デイサービスの更なる発展と子どもたちの成長を支える環境作りが期待されます。
(1)課題1:利用者数の増加と施設数の不足
現在、放課後等デイサービスの利用者数は年々増加傾向にあります。働く親が増えるにつれて、学校が終わった後の子どもたちの安全を確保するための需要が高まっているからです。実際、厚生労働省の調査によると、放課後等デイサービスの利用者数は、近年で20%以上も増加しています。
しかしながら、その一方で、サービスを提供する施設の数は十分に追いついていないのが現状です。都市部では特にその傾向が強く、待機児童の問題が深刻化しています。放課後等デイサービスに空きがない理由は、定員があることです。多くの場合、1日の定員が決まっており、それ以上の利用が見込まれる場合は、受け入れがなされません。おそらく、「現在定員がいっぱいなので、空き次第ご連絡します」と、事業所から言われた経験があるのではないでしょうか。定員が本当に空くかどうかはわかりませんし、いつまで待てばいいのかもわかりません。そのため、過度に期待せず別の事業所を探し始めることになります。
この「利用者数の増加と施設数の不足」は、放課後等デイサービスが抱える大きな課題となっており、改善が求められています。これに対応するための方策として、新たな施設開設や既存施設の拡充、さらに効率的な運用方法などが考えられています。
また放課後デイサービスは、通い始めたら数か月の人もいれば長くて12年通う方もいるので、人気の放課後等デイサービスには早めの待機登録をおすすめします。
(2)課題2:質のばらつきと管理体制の問題
放課後等デイサービスの質には大きなばらつきがあり、これは管理体制の問題から生じています。サービス質のばらつきは、子供たちへの影響が大きい問題です。例えば、スタッフのスキルレベルや施設の設備、教育プログラムの内容など、サービスを提供する要素全体に渡ってこのばらつきが見られます。
また、各施設の管理体制も問題となっています。特に、指導者の資格や経験が不十分であったり、スタッフの育成・教育体制が整っていない施設が少なくありません。適切な知識と実践が大切にされていない放課後等デイサービスがとても多いです。
だからこそ、政府の方針で2024年度から、放課後等デイサービスが「総合支援型」と「特定プログラム特化型」の2つに分類され、質の悪い事業所が淘汰されるようになるのでしょう。したがって、お子さんを預けるのであれば、良い事業所にお願いしようとする気持ちは持っておきましょう。
このように、放課後等デイサービスの質や管理体制の改善は急務であり、その解決策を模索することが、事業の将来性を見据える上で重要となります。
3. 放課後等デイサービスの将来性
放課後等デイサービスの将来性は、いくつかの強力な要素によって推進されています。
(1)増え続けるニーズ:働く親の増加と子供の安全確保
現代社会において、働く親たちが子育てと仕事を両立するために利用するサービスの一つに放課後等デイサービスがあります。社会的な働き方の変化により、共働きの親が増えています。そのため、放課後等デイサービスへのニーズは増加傾向にあります。
保護者への支援・対応も、放課後等デイサービスの需要な役割です。具体的には、子どもの支援内容の報告や、学校・家庭における生活状況などの情報収集、子育てや発達などに関する相談に対応します。保護者の時間を確保するための、子どものケアを一時的に代行することもあります。
また、放課後等デイサービスの利用者数は平成24年から年々増加しており、令和1年にはその数は約4倍になっています。障がいのある子ども自体が増えていることが読み取れます。
利用者数が増えていることから、事業所数も同様に平成24年から右肩上がりに増加しています。令和1年には事業所数は約14,000か所になり、平成24年の約7倍です。事業所数の増加からも、放課後等デイサービスの需要の高さがうかがえるでしょう。
学校や家庭とは異なる場である放課後等デイサービスについては、安心・安全でその子らしく過ごせる場としての機能も重視すべきであるといえます。保護者の就労に伴う子どもの安全な居場所の確保、さらには子どものケアを一時的に代行することによって、保護者へレスパイトケア(心理的支援)も行っているのです。
(2)多様化するサービス:個別対応や特別支援の強化
子供一人ひとりが抱える問題や能力は個々に異なるため、個別対応や特別支援が強化されています。こうした多様化するサービスは、放課後等デイサービスの更なる発展を促します。
生活力向上のための様々なプログラムが行われており、トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。
また㆒人一人の特性や発達状況、また年齢などに応じ、ひとりひとりに合わせたオーダーメイドの「療育」プログラムを作成している事業所もあります。
「個別療育」プログラムで、一つずつ出来ることを増やしていくことで成功体験を積み重ね、また「集団活動」で社会的スキルを伸ばしていくことで、児童一人一人が、自分らしく社会生活を送れるサポートを行っています。
そして、最も大切なのは、支援プログラムの狙い・計画を明確にすることです。他の放課後等デイサービスと差別化を図るためには支援内容を曖昧にせず、「どのような力をつけるためにこのプログラムを行うのか」「どのような計画でプログラムを進めていくのか」などを明確に定め、保護者に分かりやすく提示していく必要があります。
(3)質の向上:スタッフ教育や施設改善の取り組み
サービスの品質向上を目指し、スタッフ教育や施設改善に力が入れられています。これは、サービスの信頼性を高めるための重要な取り組みです。
放課後デイサービスは慢性的な人手不足の問題を抱えています。新しいスタッフが入ってこないために一人当たりの仕事量が増え、負担となってしまうケースが多々あります。有能なスタッフを育てるためには適切な環境と教育が必要です。そのためには、システムの見直しと施設改善が必須になります。
長く働きたいと思うような環境を作り上げることが、人手不足改善には欠かせないものとなります。
(4)行政との連携強化:地域包括支援システムの一環として
「地域包括ケアシステム」とは、医療、介護・リハビリテーション、予防保健など複数の医療・福祉サービスが地域の中で連携することで、誰もが地域の中で、安心して自立した暮らしを送ることのできる環境を作ろうという考え方です。
地域包括ケアシステム運用のカギとなるのが「地域ケア会議」です。各市町村の行政が中心となり、ケアマネジャー、看護師、保健師、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士などさまざまな専門職が参加して、それぞれの立場から個別の事例を検討することで保健・医療・福祉サービスの適正化を図りながら、その地域がもっている健康課題を浮き彫りにします。
たとえば、医師であれば対象者の抱える疾病の病状や今後の見込み、管理栄養士であれば毎日の食生活の分析やその改善のためのアイデア、理学療法士であれば身体機能の状態や生活の中での動作を改善する方法についてなど、それぞれが専門を生かし、気づいたことを指摘し、改善のための意見を出し合います。その全体をまとめ、今後の介護の方向性を考えていくのは、ケアマネジャーの役割です。
地域包括支援システムの一環として 地域の子供たちを支えるため、地方行政との連携が強化されています。放課後等デイサービスは、これからも地域包括支援システムの重要な一環として位置づけられるでしょう。
以上のように、放課後等デイサービスは今後も成長し続け、社会のニーズを満たしていく大きな可能性を秘めています。
4. 放課後等デイサービスの事業展開について
(1)事業開始までのプロセス
先ず、「事業開始までのプロセス」について説明します。
<開業準備>
1.法人登記または登記変更
放課後デイサービスには法人格が必要です。法務局で法人登記を行います。許認可事業のため、以下4つの要件を満たさない限り開業できません。
- 法人格の取得
- 設備基準
- 運営基準
- 人員配置基準
2.資金調達
開業準備はお金がなければ進められません。自己資金で足りないぶんは融資を受けます。放課後等デイサービスの立ち上げにかかる資金は「物件の取得と内装工事」「備品購入」「送迎用車両の購入・リース」「求人費用」「集客費用」などがかかります。 1,500万円以上の金額を自己資金で賄えることは稀です。多くの人が融資に頼らざるを得ないでしょう。融資の受け方については以下の通りです。
放課後等デイサービスの場合、給付費を主な収益とすることから支払いが滞ることはなく、事業が安定しやすい特徴があります。そのため、民間企業と比べ融資は受けやすい傾向があります。
開業前に申請が通りやすいのは以下2つの融資制度です。
1.日本政策金融公庫「新創業融資制度」
日本政策金融公庫では、これから新たに事業を始める人や、事業開始後2期を終えていない人を対象に「新創業融資制度」を設けています。創業資金総額の1/10以上を自己資金で賄えることが条件です。無担保・無保証人で、利用しやすい制度です。
なお、静岡県であった事例として、自己資金300万円程度なければ融資が下りにくいケースがありました。一つの目安として認識しておくと良いでしょう。
2.都道府県単位で設定される「中小企業制度融資」
各都道府県に設けられている、中小企業のための融資制度です。サービス業では、資本金5,000万円以下、従業員数100人以下が条件です。都道府県・金融機関・信用保証協会の三者が協調して仕組みを構築しています。
3.物件の選定
事前のリサーチで出店地域を決めておきます。そのうえで放課後等デイサービスの運営基準に適合する物件を選定します。都道府県や市町村など指定権者から許認可を取得するために、専門的な知見が求められるため、はじめての人は苦労します。
1つの教室をオープンするためには、児童福祉法や消防法などさまざまな法律の要件を満たさなければなりません。
これを知らずに物件選びを進めると許認可が得られず、労力と時間、お金が無駄になる可能性があり、開所準備が大幅に遅れる可能性もあるでしょう。
4.リフォーム、工事の手配(必要な場合)
放課後等デイサービスは子ども達の安全を守るため、厳しい設備基準が設けられています。必要な場合は工事を手配します。
5.集客活動
物件が決まったら、名刺や資料を作り営業活動を開始します。事例として、相談支援事業所や保育園への訪問、メールを活用したアプローチが挙げられます。体験会の予定や送迎エリアの紹介、定員の空き状況などを定期的にお知らせすることで、認知度を高め利用者を紹介してもらいやすい状況をつくり出します。開所すぐに多くの利用者を集めるためにも集客の工夫が必要です。
6.従業員採用活動
教室運営に必要な人員を募集します。資格保有者は簡単には集まりません。募集はできるだけ早めにかけましょう。
7.自治体への申請書類の作成
許認可を得るための書類を作成します。書類に不備がないことを確認し、担当窓口へ提出します。
8.教室設営
備品や療育に必要な道具を揃え、設置します。教室づくりでは、安全を第一に考えます。
9.保険加入の確認
火災保険は物件の契約時に、送迎車の車両保険は車両購入(リース)時に加入します。内容に不備がないか確認しておきましょう。また開所日づけで、福祉事業者用の損害賠償保険に加入します。
10.運営管理書類の作成
日々の業務で使用する書類を作成し、すぐに使えるよう準備します。以下は運営に必要な書類の代表例です。
- 契約書類
- 療育記録
- 防災
- マニュアル
11.開所
(2)利益を出すためのビジネスモデル
次に、「利益を出すためのビジネスモデル」です。初期投資を回収し、持続的な経営を行うためには、地域との連携や公共機関からの補助金活用等、様々な収益源を考慮に入れる必要があります。
(3)リスクと対策
最後に、「 リスクと対策」です。利用者数の変動や法規制の変更など、事業運営にはリスクが伴います。これらに備えて、1)事業計画の見直しや 2)最新の法規制情報 のキャッチアップが求められます。
1)事業計画の見直しとしては、以下の運営基準で定められている基準を今一度見直して、社内でしっかり情報共有する必要があるでしょう。
・通所児童や保護者の意向
・総合的な支援目標と達成時期
・生活全般の質を向上させるための課題
・具体的な支援内容
・放課後等デイサービスを提供する上での留意事項
・その他必要な事項
自治体によっては、利用児童の課題を具体化して適切な支援につなげる目的で、個別支援計画書の標準様式を作成している場合があります。
自治体の標準様式を活用すると、個別支援計画の抜け・漏れを防止できるだけでなく、他の事業所や学校・医療期間などとの連携が取りやすくなるメリットが生まれます。
2)次に最新の法規制を見ていきましょう。
預かりや学習支援などのみを提供している放課後等デイサービスは公費の対象外になる
放課後等デイサービスは、放課後や長期休みに障がいのある就学児が利用する障がい福祉サービスの1つです。個別の発達支援や集団での活動を行い、専門知識を持つスタッフが子どもの自立や社会参加をサポートします。
しかし中には適切な支援をせず、学童のように預かりのみを実施していたり、学習塾やピアノ教室のように指導に特化していたりするところもあるのが放課後等デイサービスの現状です。今回の法改正ではそのような事業所は公費の対象外になります。
放課後等デイサービスが2類型化になる
放課後等デイサービスは、これまで施設の方向性について指定されることがなかったため、支援内容は事業所によって様々でした。そのせいで適切な支援をしない放課後等デイサービスが出てきてしまい、現在では問題となっています。
今回の法改正では、放課後等デイサービスを「今まで通り様々な活動を通して発達支援を行う施設」「これまで以上に専門性を持った施設」に分けて整理し、問題が指摘されている事業所は公費の対象外とするのが狙いです。
これからも放課後等デイサービスとして生き残っていくには、支援プログラムの狙い・計画を明確にすることが大切です。2024年の法改正までまだ期間はありますが、準備を始めるのに早すぎることはありません。余裕を持って準備を行い、利用者により信頼される放課後等デイサービスを目指しましょう。
5. 最後に:放課後等デイサービス事業への期待とチャレンジ
放課後等デイサービス事業の将来性は、働く親の増加や子どもたちの安全確保など社会的なニーズの高まりを背景に非常に大きいといえます。サービスの多様化や質の向上、地域との連携強化など、充実したサービス提供に向けた取り組みが求められています。
しかし、事業展開にあたっては、適切なビジネスモデルの構築やリスク管理も重要です。特に、質の高いサービスを維持しつつ、経営の安定化を図るための戦略が必要となります。
このような課題を克服し、子どもたちの成長を支える放課後等デイサービス事業が一層発展することを期待しています。それぞれが地域の特性やニーズに応じて、独自のサービスやプログラムを展開することで、子どもたちにとってより良い環境を提供することが可能となるでしょう。
もしフランチャイズにご興味がありましたら、下記フォームよりお問い合わせ下さい!
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