1. はじめに
近年、子どもたちが学校の授業が終わった後に安全に過ごすことができる場所として、「放課後等デイサービス」の存在が注目されています。しかし、「放課後等デイサービス」で働くには何が必要なのか、どのようなスキルや資格が求められるのかについて理解している方はまだまだ少ないでしょう。
放課後等デイサービスとは、6歳から18歳の障がいがある就学児童を対象とした福祉サービスです。学校がある日の放課後や夏休み・冬休み等の長期休暇に子どもの居場所となります。
また、学校外での集団生活や子どもの特性に応じた個人活動による自立支援も大きな目的の一つです。さらに、障がいのある子どもの家族をサポートする役割も担っています。
放課後等デイサービスは「障がいのある子どもの学童保育」とも呼ばれ、原則として高校卒業まで障がいのある子どもとその家族の支援を行います。
厚生労働省の「放課後等デイサービスガイドライン」によると、放課後等デイサービスには大きく分けて3つの役割・目的があります。【子どもの最善の利益の保障】【共生社会の実現に向けた後方支援】【保護者支援】です。
また、働くうえで資格も取得していると有利です。放課後等デイサービスは児童に携わる仕事である上に、自宅から施設まで送迎の必要性もあるので次の資格が役立ちます。【児童発達支援管理責任者】【児童指導員任用】【保育士】【普通運転免許】
この記事では、「放課後等デイサービス」についての基本的な知識から、働くために必要な資格、その取得方法、さらには現場で役立つスキルや心構えまで、詳しく解説します。これから「放課後等デイサービス」で働きたいと考えているあなた、または既に働き始めているけれどもっと自分のスキルを磨きたいと思っているあなたのための情報をお届けします。今後のキャリアパスにぜひご活用ください。
2.「放課後等デイサービス」とは
「放課後等デイサービス」は、働く親を支え、子どもたちが安心して過ごせる場所を提供するための制度です。学校が終わった後の子どもたちを対象に、遊びや学習、体験活動などを通じて社会性や自立心を育む役割を持っています。
(1)「放課後等デイサービス」の概念と目的
「放課後等デイサービス」は、学校の授業が終わった後の子どもたちが安全で楽しく過ごせる空間を提供します。子どもたちの社会性や自立心を育むことを目指しており、学習支援や体験活動などを行うことで、子どもたちの成長を支えます。
放課後等デイサービスは、障がいのある子どもを預かるだけではありません。利用する事業所によって若干の差はありますが、厚生労働省の「放課後等デイサービスガイドライン」によると大きく分けて下記の4つの活動を行っていきます。
【放課後等デイサービスで行われる活動】
・自立支援と日常生活の充実のための活動
→自立支援と日常生活の充実のための活動では、子どもが将来的に自立した生活を送るための手助けをしていきます。些細な成功であっても肯定することにより、子どもの自己肯定感の高まりも期待できるでしょう。また、放課後等デイサービスでの活動内容を学校と共有・連携し自立への1歩として繋げていきます。
・創作活動
→豊かな発想力を育むためには創作活動も欠かせません。放課後等デイサービスの創作活動では、美術や音楽などの形で子どもの自己表現の向上を図っていきます。また、自然と触れ合う機会を多く設けることにより、季節の変化に興味を持てるようにしたり感性が豊かになるよう努めていきます。
・地域交流の機会の提供
→社会生活に制限のある障がい児の生活の幅を広げるため、放課後等デイサービスでは地域交流の機会も設けています。具体的には、他の福祉施設との連携・体験イベント・交流会などです。利用する事業所によって地域交流の幅は異なるので、気になる場合には事前に問い合わせておきましょう。
・余暇の提供
→学習活動ばかりではなく、子どもがホッと心から落ち着ける余暇の時間を提供することも活動の1つです。子どもが疲れない空間やリラックスできる環境作りをして安らげる余暇の時間を設けていきます。これらの活動は、子ども自身が自分の力でリラックスできるようにすることも目的です。
(2)働く上でのメリット・デメリット
「放課後等デイサービス」で働くメリットとして、子どもたちの成長を直接支えることが挙げられます。また、教育や保育に携わることへの興味や使命感を感じる人にとっては、非常にやりがいのある仕事です。
そして、放課後等デイサービスの最大のメリットは需要の増加です。放課後等デイサービスを利用する子どもの数は年々増加傾向にあります。それに伴い事業所の数も増えているので、放課後等デイサービスでの働き手は今後高い需要があると言えるでしょう。
また、放課後等デイサービスの事業所は比較的小規模であるため、数人規模のアットホームな職場で働けるのも魅力です。
しかし、一方で放課後等デイサービスで働く最大のデメリットは人手不足です。少人数制のアットホームな職場である一方で、1人あたりの負担が大きく多忙になりやすいでしょう。子どもたちへの対応や準備、記録など多岐にわたる業務をこなすため、多忙な日々を送ることになる可能性もあります。
また、子どもの障がいは様々であるため、これまで保育などで培ってきた知識のみでは対処できない場合もあります。
しかし、放課後等デイサービスは福祉業界なので社会貢献の一環となります。デメリットはありますが、障がいのある子どもの助けになる大変やりがいのある仕事と言えるでしょう。
3. 放課後等デイサービスで必要な資格
「放課後等デイサービス」で働くためには、主に次の3つの資格が求められます。
(1)保育士
子供の保育や教育の専門的知識を持つ資格です。保育士は言わずと知れた保育のプロフェッショナルです。保育士の就業場所は幼稚園や保育園が一般的ですが、保育の知識を活かして放課後等デイサービスで就業する方は増加傾向にあります。放課後等デイサービスでは、児童の身体的・精神的な健康を支える役割を果たします。
保育士の資格を取得するためには、保育士養成課程のある専門学校を卒業する、もしくは保育士試験に合格する必要がありま
(2)児童指導員
子供の指導や教育を行う資格で、放課後等デイサービスでは、子供達の学習や生活指導を担当します。児童指導員任用とは、重度の障がいがある子どものいる事業所に配置が義務付けられている「児童指導員」の職種に就ける任用資格です。
この資格を取得するためには、下記のいずれかの要件を満たす必要があります。
【児童指導員任用になる要件】
・大学もしくは大学院において社会福祉学・教育学・心理学を専修している学科を卒業
・2年以上児童福祉施設で実務経験を積む
(3)児童発達支援管理責任者
児童発達支援管理責任者は通称「児発管」とも呼ばれ、社会的な問題を解決するための専門的な知識・技術を持つ資格です。児童福祉業界で役立ちます。放課後等デイサービスでは現場統括などを任されるので、今後福祉業界で活躍したいのであれば取得しておくのに越したことはないでしょう。
資格取得には、5年以上の実務経験と「児童発達支援管理責任者基礎研修」「児童発達支援管理責任者実務研修」を終了する必要があります。放課後等デイサービスでは、子供たちの総合的な生活支援を行います。
以下に各資格の主な役割を表にまとめました。
資格 | 主な役割 |
保育士 | 児童の保育、教育 |
児童指導員 | 学習・生活指導 |
児童発達支援管理責任者 | 社会的な問題解決・総合的な生活支援 |
これらの資格は、放課後等デイサービスでの職務を適切に遂行するために必要となります。
4. 各資格の取得方法
(1)保育士資格の取得方法
保育士資格を取得する方法は次の二通りあります。
一つは、厚生労働大臣が指定する「指定保育士養成施設」という、学校その他の施設(大学・短大・専門学校など)で学んで卒業をする方法。こちらは施設により、2年制から4年制まで幅があります。高校卒業後の進路で保育士を目指したいと考えている人は、こちらを選択するのが良いでしょう。
もう一つは、年2回実施される保育士試験を受験し、合格する方法。受験資格を満たす必要はありますが、指定保育士養成施設以外の学校の卒業者や、社会人でも資格取得を目指すことができ、幅広い人に道が開かれています。
保育士資格が取得できたら、各都道府県の保育士登録簿に登録することで、晴れて保育士として働くことができます。資格は一生ものなので、例えば結婚や出産、転職、家庭の事情などで一度保育士の仕事から離れても、資格を利用して再就職することができるのも強み。生涯にわたって役立つ資格と言えます。
(2)児童指導員資格の取得方法
児童指導員の資格を取得するためには、大学の人間発達学部や社会福祉学部などを卒業し、実務経験を積むことで、資格認定試験に挑むことができます。
児童指導員として働くためにはいくつか方法がありますが、まず任用資格を取得する必要があります。主な任用資格の取得方法は6つです。
1.学校教育法の規定による大学・大学院で「社会福祉学」「心理学」「教育学」「社会 学」を専修する学部、学科を卒業している
2.地方厚生局長が指定する養成施設(福祉系の専門学校)を卒業している
3.小中高、いずれかの教員免許を取得する
4.幼稚園教諭の資格を取得する(2019年4月以降)
5.「社会福祉士」、「精神保健福祉士」の資格を取得する
6.実務経験を積んで取得する
6.の「実務経験を積んで取得する」ためには、以下の条件を満たす必要があります。
・高校や短期大学を卒業した人、あるいは高卒認定試験の合格者は、児童福祉法に基づく事 業で2年以上かつ360日以上の実務経験を積めば、児童指導員任用資格を得られます。
高校を卒業していない場合でも、児童福祉法に基づく事業で3年以上かつ540日以上の実 務経験を積み、都道府県知事に適当と認められれば問題ありません。
複数の事業所を通算して実務経験の期間を満たせば、児童指導員任用資格を得られますが 、それぞれの事業所が発行する実務経験証明書が必要です。高校や短期大学を卒業した人 は、卒業証明書も用意する必要があります。
そして、実務経験で児童指導員の任用資格を取得するために認められている事業は「児童福祉事業」のみであるという点に注意してください。
就労継続支援事業など、障がい者施設で2年以上働いていたとしても、任用資格の取得条件を満たすことはできません。
参照:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/243
(3)児童発達支援管理責任者の取得方法
児童発達支援管理責任者になるためには、実務経験と研修の修了が条件となります。実務経験が最低5年以上必要であることに加えて、実務経験を経て事業所から研修の受講推薦を得ても、研修の定員の関係で研修を受けられないことも少なくありません。
必要な実務要件も、相談支援業務の場合は5年以上、直接支援業務の場合は5〜8年以上など、ケースによってさまざまです。児童発達支援管理責任者の資格取得を目指す場合は、自分が働いている事業所で必要な実務経験を積むことができるのかなど、事前に必ず確認しておきましょう。
児童発達支援管理責任者になるには、時間も経験も必要です。決して簡単になれる職種ではありません。しかし、間接的にはなるものの複数の子どもや保護者を支援できたり、関係機関との連携など幅広い知識や調整力を求められたり、責任とやりがいのある職種だといえます。
資格取得は一定の時間と労力が必要ですが、「放課後等デイサービス」での仕事には大きな責任が伴います。資格はその能力を証明するための一つの手段であり、子どもたちの安全と健やかな成長を支えるために必要な手続きです。
5. 「放課後等デイサービス」で働くためのスキルと心構え
放課後等デイサービスで働くためには、専門的なスキルだけでなく、子供たちと関わる上での心構えも必要となります。
(1)必要なスキル
まず、保育士、児童指導員、児童発達支援管理責任者などの資格を取得することで得られる基本的な知識やスキルが求められます。また、子供たちとのコミュニケーションを円滑に進めるためのコミュニケーションスキルも重要です。
放課後デイサービスの具体的な仕事内容を下記にまとめました。
【放課後等デイサービスの仕事内容】
- ・利用者の個別支援計画に基づいたプログラムの作成
- ・集団活動や個人活動を考える
- ・学校や自宅までの送迎作業
- ・保護者との面談
- ・記録の作成
- ・施設の設備点検
- ・施設の清掃
上記のように、放課後等デイサービスの職員の業務は多岐にわたります。しかし、最大の仕事は子どもの能力を引き出すことです。自身の組んだプログラムや活動において子どもが成長した喜びは、何ものにも代えがたいでしょう。
また、保育士や児童指導員などの保育関連の資格を保有している方は優遇される可能性があります。福祉業界で活動したい方や障がいのある子どもの自立支援にやりがいを感じる方はぜひ挑戦してください。
【表1:必要なスキル】
スキル名 | 説明 |
基本的な知識 | 保育や児童指導の基本的な知識 |
コミュニケーションスキル | 子供たちと円滑にコミュニケーションを取る能力 |
(2)求められる心構え
「放課後等デイサービス」で働く上で大切なのは、子供たち一人ひとりに対する思いやりや尊重の気持ちです。また、子供たちが安心して過ごせる環境を作るため、常に柔軟な思考と忍耐強さが求められます。
働くうえで求められるのは先ほども述べた通り、まずは積極的なコミュニケーション。子ども達の気持ちに寄り添った支援をする上で、楽しくコミュニケーションをとることが不可欠です。また保護者との信頼関係を築くうえでも必須になります。特にじっくり話を聴き理解する「傾聴力」が大切になるでしょう。
そして知識・技術の向上です。障がいの種別や特性を理解し一人ひとりに即した支援をするためには、知識や技術の研鑽する努力、向上心が必要になります。個別支援計画は作って終わりではありません。モニタリングし、必要に応じて変更・改善を実施します。そのためには、各職員が計画内容を熟知し、観察力をつけ、積極的に支援計画に関与していく必要があるでしょう。
常に向上心と成長意欲を持って仕事に取り組むことが求められます。関係機関や保護者との連携を図ることもとても重要です。学校や学童などの関係機関や保護者らと常に意思の疎通を図り、連携しながら業務を遂行する必要があります。
また職員同士の意思の疎通、共有も欠かせません。個人ではなくチームで、また全体で子ども達やそのご家族を支援していくことが大切です。
【表2:心構え】
心構え | 説明 |
思いやり・尊重 | 子供たち一人ひとりを理解し、尊重する姿勢 |
柔軟性・忍耐強さ | 子供たちの成長に対応し、困難に耐える能力 |
働くうえで失敗しないようにスキルや心構えの準備をしっかりとしておきましょう。
6.まとめ
「放課後等デイサービス」で働くためには、保育士、児童指導員、児童発達支援管理責任者などの専門的な資格が必要です。それぞれの資格取得方法は異なりますが、専門学校や通信教育などを活用することで学びながら取得することも可能です。
働く上では専門的な知識だけでなく、子どもたちへの理解と共感、ペース配分のスキルや柔軟性、困難に対する適応力なども必要とされます。これらは資格取得と並行して鍛えることが重要です。
また、「放課後等デイサービス」は、障がいを持つ子ども達を支援する場所です。子どもたちの成長を間近で見る喜びと共に、責任感やストレスも伴います。しかし、適切な資格とスキル、そして心構えを持つことで、子どもたちの安全で楽しい放課後の時間を支える重要な役割を果たすことができます。
人それぞれに障がいの種類や特性が異なり、それらを熟知してサポートしなければならない大変な部分も多いですが、子ども達の成長を見届けられるやりがいのある仕事です。
一人ひとりの子どもの特性に合わせた支援を行う必要があるため、臨機応変な対応力が求められます。また、保護者支援や地域の他の事業所・学校などとの連携、送迎など、仕事内容は広範囲に及び、負担を感じるときもあるかもしれません。
しかし、子どもの成長に寄り添って発達を支援し、保護者をも支えていく、大きなやりがいのある仕事です。
施設数は年々増加傾向にあり、求人も増えています。児童福祉、障がい者支援に携わりたいとお考えの方はぜひ「放課後等デイサービス」への転職を検討されてみてはいかがでしょうか?
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